Hangman Cheated:
Death Demanded/ Sentenced to Life
Kawashita Makoto
川下誠

事件:指宿夫婦殺害 死刑求刑に無期懲役 裁判員、窃盗を適用/鹿児島地裁
2012年3月20日
鹿児島県指宿市で入居先のアパートの経営者夫婦を殺害したとして、強盗殺人罪などに問われ、死刑を求刑された川下誠被告(45)の裁判員裁判で、鹿児島地裁(中牟田博章裁判長)は19日、殺人罪と窃盗罪を適用し、無期懲役を言い渡した。
 中牟田裁判長は「退去要求から逃れたい欲求をかなえるため突発的に殺害した極めて短絡的な衝動。酌むべき点はないが、計画的な殺人に比べ、死刑がやむを得ないというには躊躇(ちゅうちょ)が残る」と述べた。
 判決によると、川下被告は昨年5月2日夜、同市大牟礼の中村重則さん(当時74歳)方で、滞納した家賃12万4000円を巡って強い口調で退去を迫られ、中村さんと妻鈴子さん(同73歳)をペティナイフで刺して殺害し、現金入りバッグや車などを盗んだ。
 検察側は「家賃を払わずにアパートに数日間居続けるためだった」とした捜査段階での自白調書を基に強盗殺人罪の成立を主張したが、川下被告は公判で「中村さんから退去を強く迫られ、かっとなってやった」と強盗目的を否認。強盗目的があったかどうかが争点だった。
 中牟田裁判長は「わずか数日間住むためにいきなり殺害するのは唐突過ぎる。自白調書には複数の看過できない不自然・不合理な点があり、信用性には疑問が残る」と検察側の主張を退けた。
 判決後、本田貴志主任弁護士は記者会見し「判決に満足している。強盗目的があったかどうかについて、裁判員の視点が取り入れられ、常識的な判断をしてもらった」と述べた。
 鹿児島地検の今村智仁次席検事は「判決内容を精査し上級庁と協議して対応を決める」と述べた。
 中村さん夫妻の遺族は「予想しなかった判決で納得できない。判決で打ちのめされた思い」との談話を出した。
 判決後、会見に応じた裁判員の40代女性は「人の命に関わることを審理し、感情が爆発しそうになった」と死刑求刑事件の審理に苦悩した胸の内を明かした。【黒澤敬太郎、村尾哲、垂水友里香】